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航空業界で活躍する3Dプリンター製最終製品

航空業界では、実際に製品に搭載される最終製品にも3Dプリンター製の部品採用が広がっています。この記事では、航空宇宙・防衛産業における品質マネジメントシステムであるAS9100Dと、世界・日本における航空業界への3Dプリンター活用について紹介します。

AS9100D認証とは

AS9100D認証とは、航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格のことで、主にヨーロッパでAS9100Dと呼ばれます。AS9100D以外にも、EN9100と呼ばれることもあります。

アメリカのAS9100や日本のJISQ9100とは技術的に同等であり、世界の航空宇宙・防衛産業でグローバルな部品調達基準として採用されています。AS9100Dの内容は、次のように多岐に渡っています。

  • 組織の品質マネジメントシステムやリーダーシップ
  • AS9100Dの運用方法、製品やサービスの設計、開発プロセス
  • 製品のパフォーマンスの評価、マネジメントレビューの方法

このように、航空宇宙・防衛産業におけるプロセスが詳細に定義されているため、本規格の認証を取得していることで、適切なプロセスを経て製品やサービスが提供されていることを証明できます。

AS9100D認証とアディティブ・マニュファクチャリングの関係

AM(アディティブ・マニュファクチャリング)に取り組んでいる企業がAS9100D認証を取得することは、航空宇宙・防衛産業に参入する上で、大きなメリットがあります。

AMは新しい技術です。従来から採用されている加工法で製造された製品と比べると、顧客の立場では要求事項の取り交わしや製造プロセス、品質の確認方法などを新たに検討し、サプライヤーと合意する必要があります。それら製品の受け入れを検討するすべての企業に対して、個別に実施するのは簡単ではありません。

そのような場合、サプライヤーがAS9100Dの認証を取得していれば、国際的な規格を満たしていることの証明となるので、安心して製品やサービスを採用できます。AMに取り組む企業で、航空宇宙・防衛産業に参入を検討する企業にとって、AS9100D認証を取得することは、今後必要不可欠になっていくでしょう。

また、顧客との関係以外にも社内体制に関するメリットが多くあります。具体的には、業務効率の改善や組織体制の強化、法令順守の推進、仕事の見える化による企業価値の向上などが挙げられます。

世界の航空業界における3Dプリンター活用

北米を中心に、世界中の航空業界で、3Dプリンターの活用は大きく進んでいます。直近の実例と今後の動向について確認します。

世界最大の航空宇宙機器メーカーである米ボーイング社では、新型エンジンである「GE9X」に300を超える3Dプリンターでの製造部品を採用しています。また、ボーイング社と並ぶ航空会社エアバス社では、新鋭機である「A350 WXB」において、客室内の部品に加え、機体のチタン製構造部品を3Dプリントで製造しています。

3Dプリンター製の部品は、外装部品よりも内装部品やメンテナンス、修理、オーバーホールへの採用が進んでいます。ここ数年で機内のガジェット類が大きく変化しており、ディスプレイやコンセント、照明、送風機など、機内設備と多様性を増すばかり。これからも変化し続けていくことが想定されます。

これらの部品に3Dプリント技術を用いることで、部品交換のコスト削減やリードタイム短縮など、部品交換における柔軟性の向上を実現しています。また、3Dプリンターの活用は大規模航空機メーカーだけでなく、個人向け航空機部品市場にも広がっています。

航空宇宙部品は、複雑な形状の部品が多く、機体の軽量化や部品交換の効率化などが求められています。3Dプリンターは、これらの要求に対して相性が良いため、今後も活用の幅が広がっていくことは想像に難くありません。

日本の航空業界における3Dプリンター活用

日本でも、航空業界における3Dプリンターの活用は少しずつ進んでいます。しかし、世界の動向に比べると、その差は広がっているように感じます。

日本には大規模な航空機メーカーが存在しないことも影響しており、最終製品に向けた3Dプリント技術の適用は、自動車業界などに比べるとそれほど活発ではありません。事例としては、IHI(石川島播磨工業)がボーイング社のGE9Xの製造に関わっており、本田技研工業は航空機部品についてGEアディティブと提携するなどが挙げられます。

また、部品を供給するサプライヤーの中には、AS9100Dの日本版にあたるJIS Q 9100の認証を取得するなど、世界の航空宇宙業界で部品提供を開始するための、準備を始めている企業も増えてきました。

今後もこの流れは少しずつ加速していくでしょう。

世界との距離感

日本の航空業界における3Dプリンター活用は、世界と比べると遅れており、その差は簡単には縮まらないと考えられます。3Dプリンターのメーカーおよび部品の供給先となる航空機メーカーが国内には少なく、大規模なメーカーや積極的に開発を進めるベンチャー企業が近くにある地域に比べると、技術提携が難しい点が要因として挙げられます。

一方で、日本でもここ数年で、世界的に通用するAS9100Dに相当する認証を取得するサプライヤーが増えています。自動車業界などの納品実績を持つ企業を中心に、高い品質や柔軟な対応などで世界的にも活躍していくことが期待されます。

まとめ

世界的には、AS9100Dの認証取得をしたサプライヤーが、航空宇宙・防衛産業に参入していくことが増えています。また、大手航空機器メーカーに加えて個人向け航空機部品への3Dプリント部品採用など、3Dプリンターの活用の機会は広がっています。

航空宇宙・防衛産業に相性の良い3Dプリント技術は、今後も技術開発とともに適用範囲は拡大していくでしょう。

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