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3D CADソフトウェア紹介

1990年代に登場した3D CADは、PCの処理能力の向上やネット環境の高速化などにより日々性能が向上しています。現在では、大規模で複雑な設計を行うハイエンドなものから、個人でも使用できるローエンドなものまで多種多様。種類や機能の多さから、3D CADの導入を検討する際には、どれを選べばよいのか選定に迷うことが多くなりました。

3D CAD導入時の検討材料として、ソフトウェアのそれぞれの強み、特徴、価格帯などを解説します。

価格比較

3D CADは性能や価格などによりハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドと分類されます。

ハイエンドは高い性能を持つ3D CADです。高速処理や大規模な設計にも対応し、さまざまな解析機能なども備えています。高機能であるため、価格も高価であり、高速処理に対応できるマシンパワーも必要になります。

ミドルレンジは機能、価格面でハイエンドとローエンドの中間に位置する3D CADです。低価格でありながらハイエンドに近い機能を持つものもあります。希望の機能を満たすものであれば、ハイエンドよりも低価格で使用できます。

ローエンドは機能的には限られたものになりますが、低価格で導入がしやすく、3D CADをまずは使ってみたいと検討している場合などには最適です。

以下は主な3D CADを性能、価格で分類したハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドの表です。


ハイエンド

製品名 メーカー 参考価格
CATIA V5 ダッソー・システムズ社 導入費用 約175万円~430万円
年ライセンス約 40万円~60万円
Creo Parametric Parametric Technology (PTC) 年サブスクリプション(年) 約50万円~250万円
NXシーメンスPLMソフトウェア社要問合せ

ミドルレンジ

製品名メーカー参考価格
SolidWorksSolidWorks98.5万円~158万円
年間保守契約 20.4万円~32.4万円
Inventorオートデスク3年契約 99万2200円
1年契約 36万7400円
1か月契約 4万6200円
Solid EdgeシーメンスPLMソフトウェア要問合せ
iCAD富士通株式会社138万円~
IRONCADIronCAD, LLC89.8万円~
図脳CAD 3D株式会社フォトロン80万円
TOPsolidMissler Software99万円~

ローエンド

製品名 メーカー 参考価格
Fusion 360オートデスク61,600円(年)
OnShapeParametric Technology (PTC)社16万1500円~32万3000円
RhinocerosRobert McNeel & Associates158,400円(Rhino 7 商用版)

3D CADソフトウェア解説

3D CADのソフトウェアは「ハイエンド」「ミドルレンジ」「ローエンド」の3つに分類され、さらに「建設向け」ソフトウェアもあります。ここでは3D CADソフトウェアをカテゴリー別に解説します。

ハイエンド3D CADソフトウェア

CATIA V5:ダッソー・システムズ

CATIA V5は、自動車業界をはじめ、航空、造船、産業機械、電子機器など幅広い分野で多く使用されているハイエンドモデルの3D CADです。さまざまなパッケージ形態を持ち、設計、アッセンブリ、デザイン、解析、シミュレーションなど、製造に関するあらゆる工程に対応できます。

部品点数の多い大規模なアッセンブリにもスムーズに対応可能であり、複雑な曲面の作成や修正、動きのある部品の検証なども高速に表示して行え、高度な解析、シミュレーション機能も持っています。PLM(product life-cycle management)製品と連携して使用されることも多く、製品開発のプロセス全体をサポートしています。

Creo Parametric:PTC

Creo Parametricはパラメトリック、フィーチャーベースモデリングを基本とした、ハイエンドモデルの3D CADです。機械設計で多く使われ、設計に限らず、CAM、CAE、データ管理システムなどとの連携も容易に行えます。

リアルタイムシミュレーション機能や、構造解析や運動解析、疲労解析、熱解析、金型重点解析、沿面距離解析、クリアランス解析など、さまざまな解析機能を搭載。3Dプリンターによる積層造形用のモデリングなどにおいては、同じ環境内でチェックや最適化が可能です。複数のソフトウェアでの管理をなくし、設計から製品製造までのサイクルを短縮できます。

NX:シーメンスPLMソフトウェア

NXは自動車、家電、精密機械などの分野で多く使われ、設計から、解析、製造に至るまで、製品開発における各工程をトータルにサポートできるハイエンドモデルの3D CADソフトウェアです。設計や製図、モデリング、アッセンブリ、CAM、CAEなど豊富なモジュールを搭載しています。ソリッド・サーフェスが混在したモデリングや、パラメトリックモデリングとノンヒストリーモデリングのそれぞれからのアプローチ、NX以外のCADでつくられたデータのダイレクト編集など、自由度の高いモデリングができます。

CAM、CAEでは、実際の製造アプローチと同等の操作性を可能とし、特に板金や電気、溶接といった現場レベルでのノウハウの蓄積、再利用を可能にするナレッジエンジンなどにより、製品開発期間の短縮や品質向上が望めます。PLMのTeamcenterにより、設計プロセス管理の一元化が行え、設計に関わるすべてのデータの管理が可能です。

ミドルレンジ3D CADソフトウェア

SolidWorks:SolidWorks

SolidWorksは、1995年に最初の製品が発売されたミドルレンジ3D CADソフトウェアの先駆けであり、高いシェアを持っています。Windowsに準拠した操作性の高いインターフェースを持ち、フィーチャーベースのモデリングによる3次元設計やアセンブリ、板金、溶接、モールド、干渉チェックなどの豊富な機能を持っています。多くのパートナー製品やカスタムツールに対応しているので、さまざまな業界や製品、用途に合わせて機能を追加して対応することが可能です。

ファイル間の参照関係による設計変更反映や、部品同士の干渉・クリアランスをチェック、強度シミュレーションなど、設計ミスを防ぐ機能が備わっており、機械設計用途での利用が多いですが、デザイン用途でも利用されています。

Inventor:オートデスク

Inventorは、2D CADで非常に高いシェアを持つAutoCADと同じオートデスク社のミドルレンジ3D CADです。AutoCADデータの参照利用や連動させながらの設計が可能であり、過去の設計資産をそのまま使用することができます。フィーチャーベースのモデリングによる3次元設計以外に、レンダリング、解析、ダイナミックシミュレーション、アセンブリなどの豊富な機能を備えています。モデリングでは板金設計、フレーム設計、プラスチック部品設計などの機能を標準で持ち、標準で100万点以上の部品ライブラリを備えているので、設計作業が軽減されます。

Solid Edge:シーメンスPLMソフトウェア

世界で初めてマイクロソフト社のOffice Compatibleを取得したWindows完全準拠のパラメトリック・フィーチャベースの機械系3D CADです。初期のバージョンではモデリングカーネルにACISを採用していました。1998年にUnigraphics Solutions社に買収されてからは、同社開発のモデリングカーネルであるParasolidベースに変更になります。現在はシーメンスPLMソフトウェア社が開発を続け、同社のハイエンド3D CADのNXに次ぐミッドレンジのCADに位置付けられています。

同社の開発したシンクロナステクノロジーにより、ヒストリ型CADのパラメトリックモデリングと、ノンヒストリ型CADのダイレクトモデリングの機能の良い点を兼ね備えたシステムを持っています。

iCAD-SX:富士通

iCAD-SXは機械設備や電気設備、大型装置などの大規模アセンブリに特化した高速エンジンを持つ3D CADです。300万部品の大規模な機械装置の3次元データを0.2秒で処理する性能を持っています(バージョンV8)。干渉チェックや機構検証などのアセンブリ検証機能、構造解析や梁構造計算、ウォークスルー確認などの機能も備えています。

IRONCAD:IronCAD, LLC

IRONCAD(アイアンキャド)は、高い操作性を持ち、装置や治具などの機械設計に適した機能を備えています。CADデータパーツコレクションの「カタログ」からドラッグ&ドロップすることで、簡単にモデリングを進めることが可能です。独自の位置決め配置ツールなどにより設計のスピードアップと工数削減を実現します。

図脳CAD 3D:株式会社フォトロン

図脳CAD 3Dは、シンプルで使いやすいインターフェースを持ち、ダイレクトモデリングによる直感的な操作で3次元設計ができる3D CADです。ハイエンド3D CADと同じカーネルを搭載し、各種データをそのままインポートすることができます。

TOPsolid:Missler Software

TOPsolidカーネルにParasolidを採用したラメトリック、フィーチャーベースモデリングによる3次元設計をおこなえる3D CADです。ソリッド、サーフェス、シートメタル、ワイヤーを組み合わせたモデリングの他、解析、大規模アセンブリに対応した高速読み込みなどができます。

ローエンド3D CADソフトウェア

①Fusion 360:オートデスク

Fusion 360 は、ローエンドの3D CADソフトウェアでありながら、3Dモデリングの他、CAM、CAE、PCB、レンダリング、解析、アセンブリなどの豊富な機能を備えています。パラメトリックモデリングとスカルプトモデリングに対応し、機械設計もデザインも1つのソフトで行うことができます。

ソリッドモデル、サーフェスモデル、T-Splineモデル、メッシュモデルなどの各種モデルに対応。部品同士の干渉チェックや、機構シミュレーション機能を標準装備しています。3Dモデルと図面をリンクさせることが可能であり、設計変更が自動的に反映され、ミスを大幅に削減できます。静的応力解析、モード周波数解析、熱解析、熱応力解析などのシミュレーション機能も備えています。また非常に優れたレンダリング機能により、プロトタイプの可視化や営業ツールとしての画像の作成なども行うことができます。フルクラウドで動作するので、データ共有や複数人での同時作業もやりやすくなっています。

商用利用の場合は有料になりますが、非商用ならば無料で使用可能です。

②OnShape:PTC

OnShapeはクラウド上で全ての作業を行うことができる、機械設計向けの3D CADです。Web ブラウザ上で動作するので、インストールも不要です。パーツ、アセンブリ、図面、サーフェス、板金、ライブラリなどの機械設計に係わる機能がすべてクラウド上で使用できます。データ共有しながらリアルタイムでの共同編集が可能であり、リモートワークで遠隔地の設計者と共同で作業を進めることも可能です。

無料でも利用可能ですが、作成したデータがパブリッククラウド上にアップロードされるため、業務では非公開でデータの保存ができる有料版を使うことが求められます。

③Rhinoceros:Robert McNeel & Associates

Rhinocerosは、船舶関係のデザイン向けにAutoCADプラグインとして開発され、その後スタンドアロンの製品としてリリースされた3DCADです。NURBS曲線で表現されるサーフェスを用いたモデリング機能をベースとしています。工業、建築、船舶などのデザインの他、CGの業界でも使用されています。

建設向け3D CADソフトウェア

Revit

RevitはAutodesk社が開発している建築用の3D CADです。BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)の強力な支援ツールとして、意匠設計用、構造設計用、設備設計用の機能を備えています。建築設計、MEP(機械、電気、配管)、構造エンジニアリング、建設施工など幅広く対応しています。

まとめ

3D CADはハイエンドからローエンドまで数が多く、それぞれの持つ機能も非常に多彩です。近年、フルクラウドで使える、高機能ながら安価、もしくは無料で活用できるものもあるので、一度そのようなものを使って試してみるのも手です。ミドルレンジの製品も年々高機能になり、導入もしやすくなっています。すでに2Dでの多くの設計資産がある場合は、それを活かすことを考える必要もあります。情報を集め、より最適な3D CADを選択してください。

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