3Dプリンター利用ガイド: 本格検討編

PLM運用イメージ

PLMを活用するためには何が重要か。PLMの導入と運用の実際

PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)が注目を集めている。前回はPLMとはどのようなものであるか、PLMを活用する意義について解説した。製造業のデジタル革新において、PLMは今後重要な役割を持つシステムとなるだろう。今回は、実際に導入、運用していくのには何を検討し、用意しなくてはいけないのか。PLMを活用していくポイントを解説する。

余裕をもった計画と十分な事前検討を。PLM活用のポイント

PLM導入にあたっての留意点とは

PLMを導入しようとしたが上手くいかなかった。導入してみたものの運用が上手くいかず、誰も使わないシステムになってしまった。このような話がよく聞かれる。多くの場合、事前の検討不足や、見切り導入による失敗が原因だ。どのようなシステムを導入するにしても、事前の準備検討は欠かせない。それではPLMを導入するにあたってどのようなことに留意すべきなのか。

新しいシステムの導入を検討・推進する場合、各部署から選抜された人員でプロジェクトチームを組織し、進めていくのが一般的だ。PLMは、企画、開発設計段階から、生産、販売、廃棄に至るまで、製品のライフサイクルに係る情報を一元管理することで、収益やコストを最適化するシステムである。設計、製造の部門はもちろん、全社的に活用されるシステムとなる。部門を超えての調整や、仕組み作りが必要となるため、プロジェクトチーム内には、システムを最も使用する設計、製造の部門の者をはじめ、全社的に関係する部署の者が入るのがよい。

次に、現状の業務で作られるデータの流れを調査し、正確に把握しなければならない。どのようなデータが、どこで発生して、どのような形式で流れていくのか。作成されたデータの使用、保存、管理の状況。そもそもそのデータを作る必要があるのか。既にあるデータも、今後も保管、管理しておく必要があるのかどうか。そのような点まで含めて、まず現状を正確に把握して分析し、PLMでの最適な活用方法の検討が必要だ。

各部門でデータの形式や運用ルールが異なると、PLMでの一元管理が難しくなる。全社的に様々なデータの標準化、共有化を進めておけばPLMの導入がスムーズに進む。データの作成や取扱いなどについての取り決めも、部門を超えて共通化されているのがよい。なによりも、PLMによって、今と比べて業務をどこまで改善したいのか共通の目標を持つ。そして、PLMで何をどう変えたいのか、どのような点で活用していきたいのか明確な目的を定め、会社全体のミッションとして導入の検討を進めなくてはならない。

3Dデータイメージ

 

PLMの運用に行き詰まらないために重要なこと

PLMの運用に行き詰る原因としては様々なものがあるが、大きく分けて3つ挙げられる。1つ目としては、そもそも導入にあたっての検討が甘く、導入したシステムが自社の業務にそのままでは適合していない場合だ。例えば、現状のシステムを正確に把握せず、導入を急ぐあまりに予算に合わせる形でシステムを導入。導入したシステムに現状のものを当てはめていこうとする。しかし、機能が不足していたり、必要以上の規模のものであったりして上手くシステムを移行できず、そのまま誰も使わなくなっていくというような例だ。

2つ目としては、現状の把握などの検討は十分に行われているものの、導入の工程をあまりにも急激に進めた場合だ。例えば、システムを1日で入れ替え、従来との違いなども詳細に記載した手順書も用意して、翌日から新システムに移行。しかし、現場は不慣れなシステムに混乱し業務が停滞。やむなく旧システムに戻して、新たなシステムへの不満だけが残り、そのまま使われなくなるという例が挙げられる。

3つ目は、何でもPLMへ統合して、全てをPLMで行おうとした場合だ。システムへ無理に組み込まなくてもよい業務も組み込もうとしてシステムを複雑化させ、導入・管理コストを引き上げてしまい、本来の目的を見失うのでは意味がない。

いずれの場合も、明確な目標や目的を持ち、それに沿った形で十分な検討を行い、時間的にも余裕を持った導入、運用が必要といえる。必須項目・不要項目の洗い出し、優先順位づけ、段階を分けた達成ポジションの設定など、最終目標に向けた長いスパンでの計画を最初に立てておくことが、運用においては重要といえる。また、運用していく間に様々な不具合が必ずでてくる。その時点で計画を再検討することで、問題に対して柔軟に対応し、場合によっては一時運用を停止してシステムを見直すことも必要だ。今までにないものに変えていくには、急ぐことなく、今までの変化と現状を確認しながら少しずつ進めていくのがよい。
 

PLM導入・活用事例の紹介

次にPLMの導入、活用事例を見ていく。金属・非金属の切削加工で自動車部品などを製造している曙工業株式会社では、シーメンスPLMソフトウェアのNXを導入している。曙工業株式会社では、顧客からの要求の多様化や、部品の高性能化による難削材の増加などに対応するため、最新の工作機械を積極的に導入している。そのため、工作機械やコントローラの種類が多く、既存の機械と最新の機械が混在して組み合わせは多岐にわたり、業務が複雑化していた。PLMを活用することで、顧客から支給されたデータの取り込みや修正にかかる作業が改善され、作業時間の短縮や事前にトラブルを回避することが可能となっている。属人化していたノウハウによる業務も、会社全体で対応できるようになり、コスト削減、受注拡大につなげている。

プリンターや時計、電子デバイスなど幅広い製品を扱うセイコーエプソン株式会社では、NECのObbligato Ⅲを利用して製品情報を一元管理する管理基盤を構築している。これにより、グローバルに製品展開しているセイコーエプソン株式会社では、部門や拠点を越えて製品情報を容易に確認、伝達できるようになっている。例えば、1つの部品を部品表上で修正すれば、同じ部品を使用している他の製品でも同様に部品が変更され、メンテナンスかかる作業を大幅に削減している。他にも、国ごとに仕様の違う製品において、部品だけでなく同梱物、保証書なども、違いが一目でわかるように管理、表示され、管理にかかる手間や時間の削減に成功している。

一眼レフカメラ用交換レンズなどを製造・販売する株式会社タムロンでは、富士通のPLEMIAを導入している。株式会社タムロンでは、設計時の部品データから調達・製造時の部品データを手動で入力して個別に管理するなど属人化した作業が多く行われていた。PLMを活用することで、設計データから部品表を構築し、製造システムと自動的に双方向でデータを連携。属人化していた作業は自動化され、データも共有されるようになった。これにより、開発部門の業務の生産性を向上させるだけでなく、調達・購買などの計画管理部門の業務の生産性も向上させることに成功している。

データ活用の現場イメージ
 
 

まとめ

PLMは効果的に運用することで、今まで各部署に散らばっていたデータが一元管理され、時間やコストを削減し、製品の収益を最適化する。そのためには、導入前から明確な目標と目的に沿った計画を立てることがまずは必要となる。無理な導入、運用計画は現場での反発や、急な変更による障害で、逆に収益を悪化させることとなる。段階的に無理のないペースで導入、運用をすすめていくのがよい。

また、導入にあたっては、運用まで含めたサポートをしっかりと行ってくれるベンダーをパートナーとして選ぶ事も重要だ。自社内だけで全てを行おうとせず、信頼できるパートナーと組むことが導入、運用を成功させるカギとなる。