3Dプリンター利用ガイド: 本格検討編

PLMイメージ

IoT時代で注目されるPLMとは何か。代表的な製品と活用事例

PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)が注目を集めている。PLMは、製品の開発設計段階から、生産、販売、廃棄に至るまでの、製品に係る情報を一元管理。これにより、開発設計業務の効率化や在庫の最適化を行い、企業の利益を増大させることを目的としている。PLMとはどのようなものなのか。PLMを活用する意義やメリット、デメリット、今後の展望などを解説していく。

製造業のデジタル革新を推進するPLM

PLMとは何か

PLMは「Product Lifecycle Management」の略で、「製品ライフサイクル管理」と訳される。企画、開発設計段階から、生産、販売、廃棄に至るまで、製品のライフサイクルに係る情報を一元管理することで、収益やコストを最適化する手法、またはそれを行うシステムを指す。

PLMの基本的な概念は1950年代にアメリカで生まれたとされる。1980年代に入り、CADが設計現場に普及しはじめると、設計情報がデジタル化されるようになった。これにより、紙ベースの時と比べて情報の相互のやりとりが容易になった半面、設計データが増加し、システム上で製品データを管理する必要が出てきた。更に3D CADが利用されるようになると、設計データは膨大複雑化し、各部門間での相互の活用がより難しくなってきた。そこで、各部門の持つ図面などの設計データや、部品リスト、製造コスト、仕様といった製品データを一元管理するPDM(Product Data Management:製品データ管理)システムが開発される。これにより、設計や製造の各部門間で製品データを有効活用できるようになった。

2000年代に入ると、ネットの普及でグローバルな情報共有が容易となった。それに伴い、製品データに加えて企画や設備、生産業務、調達、保守、変更、廃棄といった製品のライフサイクルに係るあらゆる情報を、部門を超えて一元管理するPLMのシステムが登場してくる。PLMにより、今まで設計、製造の部門の中で活用されていた製品データを、他の部門の持つデータと連携させながら相互に活用することが可能となった。これにより、各部門が顧客の要望を的確に把握し、開発設計業務の効率化や在庫の最適化が行われ、企業の利益を増大させると共に、新規開発着手や生産中止などの経営判断もしやすくなった。

最近では、PLMにより見えてくる現場や顧客からの要望を製品に即座に反映。3DCADによるデジタルモデル とPLMに搭載されるシミュレーションツールでシミュレーションを実施。試作回数を減少させるだけでなく、3Dプリンターにより要望に対応した試作品、または製品を短時間で製作することも可能となっている。3Dスキャナーを利用することで旧来の生産設備やラインをデジタル化し、PLMにより管理する事なども行われている。

PLMを議論するイメージ
 

PLMを活用する意義

インダストリー4.0 、IoT、ビッグデータ、AIといった、製造業のデジタル革新に関しては近年大きな話題となっている。製造業のデジタル革新では、様々なソフトウェアやデジタルデバイスが使用されることで、俗人化していたノウハウや、見えていなかった問題が数値化され、後からも利用しやすい形で素早く共有することができるようになる。開発速度を上げることや、自動化、効率化もやりやすくなる。働き手人口の減少による人手不足や、技術継承の問題に対応するためにも、デジタル革新は早急に対応すべき事案といえる。

しかし、製造業のデジタル革新においては、今までデータ化されていなかったものがデータ化され、管理すべきデータ量が大幅に増大する。増えたデータを有効に使える形で管理しなければ、そのデータは意味を持たなくなる。そして、よりデータの価値を高めて利益を生む為には、部門を超えたデータの相互利用が必要となるが、各部門で管理するシステムが異なれば、相互利用は難しくなる。PLMを活用することで、各部門から出てくる製品に係る多くのデータを一元管理し、それを相互に連携させることで有効に活用することが可能となる。製造業のデジタル革新において、PLMは重要な役割を持つシステムだ。

PLMにより、各個人が持つ技術情報が部門を超えて一元管理できれば、設計製造ミスによる戻りが減り、開発にかかる時間やコストを削減することができる。過去の情報にアクセスしやすくなれば、次の製品の検討や改善が容易になり、製品の質を高めるだけでなく、開発スピードを上げることになる。ERP(Enterprise Resources Planning)などの基幹業務システムと連携すれば、材料の調達価格、調達時間なども反映しながら開発設計が行えるので、よりコストを意識した製品開発が行える。製品の廃棄の時期から考え、メンテナンスパーツをいつまで、どのぐらいの数を持っておくべきか判断することも可能だ。次の製品を開発する時期も予測できる。

更に、設計開発の際に作成された3Dモデルは、PLMでシミュレーションに利用するのはもちろん、3Dの資料やカタログとして営業部門が共有することで営業ツールとしても使える。それにより得られた顧客からの要望をPLM から設計部門に戻し、3Dモデルに反映。3Dプリンターで出力すれば、即座に現物として提供もできる。このようにPLMによって、会社全体として開発設計業務の効率化を推し進め、活用次第によって利益を最大化することができるのだ。
 

PLMの製品と活用事例

PLMの主なメーカーと製品名には以下のようなものがある。

社名 製品名
シーメンスPLMソフトウェア Teamcenter
ダッソー・システムズ ENOVIA
富士通 PLEMIA
NEC Obbligato
図研 PreSight
PTC Windchill
アラス Aras Innovator
オートデスク Autodesk PLM 360

PLMのシステムは、CADの導入が早くから進み、PDMを活用して幾つもの部署で製品データを相互にやり取りする必要があった、自動車産業、航空機産業などで早くから活用されている。最近では、機械の製造を始め、建材製造、アパレルや食品製造、小売業界などでもPLMのシステムが導入されている。例えば、日野自動車株式会社では、シーメンスPLMソフトウェアのTeamcenterを導入し、今までバラバラに管理されていた設計データを一元管理。過去から最新のデータまで、いつでも誰でもアクセスができるようにした。これにより、開発時間の短縮や設計品質向上などに効果を上げている。

自動車業界では他にも日産自動車がTeamcenterを導入し、トヨタ自動車がダッソー・システムズのPLMシステムを導入している。

食品業界では、キリンビール株式会社がNECのObbligatoを導入し、商品情報を一元管理している。これにより、品質向上や安全・安心な商品を提供するシステムの構築に役立てている。

小売業界では、アメリカのファッションウォッチブランドのFossilグループが、ダッソー・システムズの消費財・小売業向けPLMソフトウェア「マイ・コレクション」を導入している。

自動車業界イメージ
 

まとめ

PLMは、製造業のデジタル革新において、重要な役割を持つシステムとして今後もその傾向は強まっていくと考えられる。PLMにより、企画、開発設計段階から、生産、販売、廃棄に至るまで、製品に係るあらゆる情報を一元管理することで、今までに無かった速さや確度で設計開発業務が効率化される。製品を的確なタイミングでマーケット送り出し、企業の利益を最大限に増大させるだろう。

しかし、PLMの導入にあたっては、過去の資産をどのように扱うか、既に導入されているシステムとの連携をどうするかなど、業務のやり方を根本から変えなくてはならない場合もある。部門を超えて利用されるシステムなので、導入にあたっては全社的に様々な検討が必要となる。いまだ導入に踏み切れない企業は数年後になってから手遅れとならないよう製造業のデジタル革新と共に、PLMの計画的な導入を早急に検討するべきだろう。