3Dプリンター利用ガイド: 本格検討編

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PLMの先進活用事例紹介。機械から食品、アパレルまで!

PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)が注目を集めている。先のコラムでは、PLMとはどのようなものであるのか、導入・運用についてどのようなことを意識するのかを解説してきた。今回は実際の導入例を元に、PLMがどのように利用されているか解説すると共に、PLMが製造業にもたらす効果と、今後の展開を解説していく。

広がる活用例。PLMは製造業のスタイルを変える

PLMの活用例。自動車、機械編

膨大な数の部品や機器類を使用する自動車業界では、早くから3D CADの導入が進むと共に、製品データを管理するためPDM(Product Data Management:製品データ管理)システムの導入が進んだ。さらに、グローバルに展開する近年の自動車業界では、国や地域によって多種多様な要望、仕様変更があり、それに対して素早く正確に対応しなければならない。そのため、製品データだけでなく、企画や設備、生産業務、調達、保守、変更、廃棄といった製品のライフサイクルに係るあらゆる情報を、部門を超えて一元管理するPLMの導入も積極的に行われている。

例えば、日野自動車株式会社では、シーメンスPLMソフトウェアのTeamcenterを導入している。かつては車両開発とエンジン開発部門で異なるCADソフトウェアを使用し、設計データはバラバラに管理されていた。これをPLMシステムにより一元管理。過去から最新のデータまで、いつでも誰でもアクセスができるようにした。

日野自動車株式会社の製造するトラックは、同車種でも部品の取り付け位置が異なるなどの理由で、1000にも及ぶバリエーションが存在している。部品の設計変更があれば、同様の部品を使う全てのトラックに対応せねばならず、その数は膨大なものであった。異なる部門間での協業が必要な作業もあり、情報を準備するだけでも多くの時間を費やしていた。PLMによりデータが一元管理されたことで、最新データを素早く入手することが可能となり、開発時間の短縮や設計品質向上などに効果を上げている。また、CADデータをカタログ製作に利用してコストを削減するなど、設計開発部門だけに留まらない効果をあげている。

自動車業界では他にも日産自動車がTeamcenter、トヨタ自動車がダッソー・システムズのENOVIA、アメリカのGMがarasのINNOVATORを導入している。他にも、アメリカのエアバス社や川崎重工業、ヤンマーなど、航空宇宙、機械、電気といった多くの製造業でPLMが導入され、開発の合理化、品質向上、コスト最適化などに成功している。

 

PLMの活用例。飲料、アパレル編

自動車、航空宇宙、機械、電気といった業界以外の製造業でもPLMの導入は進み、それぞれの業界で効果をあげている。例えば食品業界では、キリンビール株式会社が、原材料、包材、製造工程、産地などの情報を一元管理する「商品情報システム」として、NECの「Obbligato II 食品業向けPLMソリューション」を導入している。

キリンビールではビールや缶チューハイ、ウイスキーなど銘柄やサイズの異なる数多くの商品を製造販売しており、1,000点におよぶ商品の関連情報を持っている。PLMを導入する前は、Excelなどで管理表を作成し、製造、調達、開発などの各部門が情報を登録したものを社内システム上で公開することで、商品関連情報の管理を行っていた。これでは管理が煩雑になり、情報の正確性を保つことや迅速な検索が難しく、管理の効率化が課題となっていた。PLMを導入後は、商品関連情報が一元管理され、全社員が権限に応じて手軽に参照可能となり、さまざまな効果をあげている。

飲料パッケージ多種イメージ

流通に新商品などを提案、納品する際、製造工程、原材料情報などを記載した商品規格書を、食品メーカー側から提出する必要がある。営業担当者は、流通各社で異なるフォーマットに合わせて商品規格書を作成するが、従来は必要な情報を管理表から探し出して転記することで作成していたため、多くの時間を費やしていた。PLM導入後は、この作業が自動化され、大幅な作業時間の短縮につながっている。原材料の産地変更などの情報も直ちに反映されるため、食品トレーサビリティも確保され、食の安全、安心を推進することにも効果をあげている。

他にも、食品業界では、韓国の発酵食品専門企業であるDaesang社はシーメンスのTeamcenterを導入している。食品業界に留まらず、アパレル業界や化粧品業界などでもPLMの導入が進んでいる。いずれの業界も、扱う商品数や部品点数、原材料の種類、産地などが多岐にわたり、顧客や仕様に合わせてのカスタマイズが多く、新製品の開発サイクルも早い業界が多い。PLMによる、収益やコストの最適化の効果が高い業界といえる。

 

PLMにより今後どう変わっていくのか

かつて製造業では、高品質、高機能な製品を、より安く大量に生産することが求められてきた。現在は、消費者のニーズが多様化し、高品質、高機能であることは当然として、それぞれのニーズに合わせた多品種、少量での生産にシフトしてきている。ニーズの移り変わりも早く、開発サイクルも従来とは比べ物にならないぐらい早くなってきている。

多品種、少量生産、開発サイクルの加速に対応するため、製造現場には、3Dプリンター、3Dスキャナーといったデジタルデバイスが増えてきた。3Dプリンターで使用される3D CADで作成されたモデルは、PLMでシミュレーションに利用できるのはもちろん、3Dプリンターで出力すれば、1点からでも試作品として、あるいは製品として使用できる。何千、何万とつくらなくとも、たった1点だけのニーズにも対応できるような世界になってきた。

それにともない、扱う製品の種類が増え、設計データはもちろん、原材料や製造手順なども加速度的に増えていくことになる。3Dプリンターで1点から作れるといっても、毎回新たにデータを作成していては効率が悪くなり、管理するデータも増え続ける。過去の資産も有効に活用して、不要なデータ作成を行わなければそれだけコスト削減にもつながる。製品のライフサイクルに係る情報を一元管理するPLMは、これからの製造業には欠かせない存在となる。

今後さらなる多品種、少量生産の傾向が強まれば、大手だけでなく、中小の企業においても数多くの製品データを持つことが予想される。また、人手不足や後継者不足が問題視されている今、その製品の事を把握している現場担当者がいなくなっただけで、過去の製品データを失う、もしくは使えなくなることも考えられる。製品に係わる情報のデジタル化、デジタルデバイスの活用、PLMによる情報の一元管理などは、製造業において早急に進めておくべき事案といえる。

 

3Dプリンター造形イメージ
 

まとめ

多品種、少量生産に対応するため、デジタルデバイスの活用は、今後さらに進むことは確実といえる。その際、増え続ける製品に係わるデータを手動で管理するには限界がある。早い段階でPLMの導入も検討しなくておくべきだ。多くのデータを上手に管理し、有効に使うことは製造業において利益を生み出す鍵となる。

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