3Dプリンター利用ガイド: 本格検討編

インクジェット方式3Dプリンター

フルカラーでの高速造形も可能! インクジェット方式3Dプリンター

インクジェット方式の3Dプリンターは、樹脂などの素材そのものや結合剤をノズルから噴霧することで造形を行う3Dプリンターだ。高速なフルカラーでの造形が可能であり、近年では金属素材による造形が可能なものも出てきている。インクジェット方式の3Dプリンターの基本的な特徴と、使用におけるメリット、デメリットを解説する。

複数の素材を組み合わせることや、金属素材の造形も対応可能

 

インクジェット方式の特徴

インクジェット方式の3Dプリンターは、マテリアルジェッティング(Material jetting)とバインダージェッティング(Binder jetting)の2つの方式に分けられる。どちらも紙に印刷行うインクジェットプリンターと同様に、高速でXY方向に移動するノズルからインク状の素材や結合剤を噴霧することで造形をおこなう。1層目の形状を造形後、その上に2層目の形状を噴霧、造形。これを繰り返すことで目的の形を造形していく。

マテリアルジェッティングでは、主にインク状にした光硬化性樹脂が使用される。ノズルから造形ステージ上に光硬化性樹脂を1層目の形状に噴霧し、紫外線を照射して硬化。その上に2層目を噴霧して硬化させ、これを繰り返すことで造形をおこなう。
カラーインクジェットプリンターと同様に、CMYKの4色の樹脂を混合して噴霧することで様々な色を作り出し、フルカラーでも造形が可能だ。また、性質の異なる素材を混合して噴霧することで、場所により異なる性質を備えた形状に造形することもできる。ノズルから噴霧される光硬化性樹脂は非常に微細であって、積層していく間隔(ピッチ)も材料押出堆積方式などと比べて非常に狭く、滑らかな表面に仕上げることができる。
造形の際には、中空構造となるような場合にサポート材を同時に造形する必要があるが、サポート材のみ水に溶けやすい素材に変えるなどの対応で、サポート材の除去が容易になる。

バインダージェッティングでは、石膏や金属などの粉末が敷き詰められたところにノズルから結合剤(バインダー)を噴霧することで1層目の形状を造形。粉末を敷き詰めることと結合剤で固めることを繰り返して目的の形状を造形していく。
マテリアルジェッティングと同様に、CMYKの4色の結合剤を使用することでフルカラーの造形が可能だ。粉末が敷き詰められているので、粉末焼結積層造形方式と同様にサポート材は不要。造形後に加熱処理をする必要があるが、金属素材や熱可塑性樹脂の造形も可能であって、粉末焼結積層造形方式よりも早く造形ができる。
 
フルカラーの造形物
 

インクジェット方式3Dプリンターの製品例

インクジェット方式の3Dプリンターの代表的なメーカーと機種を以下に挙げる。
 

社名 代表機種名 特徴
Stratasys アメリカ Stratasys PolyJet system 世界高いシェアを持つ3Dプリンターメーカー。独自のPolyJetテクノロジーにより高速、高精細の造形を実現。
HP アメリカ HP Jet Fusion 3D 従来よりも早く、低コストでの造形を実現。熱可塑性樹脂であるナイロン12を使用して高品質なフルカラーのプラスチック製品を造形することも可能。
XJet イスラエル XJet series 液体状の金属素材を噴霧することも可能なインクジェット方式の3Dプリンター。
KEYENCE 日本 agilista series 高精細造形。水溶性サポート材造形にも対応。ゴム素材の造形も可能。

 
インクジェット方式の3Dプリンターは、高速なフルカラーによる高い表現力を持った造形により、フィギュア製作や形状確認用モデル製作などに多く使われてきた。近年では金属素材や熱可塑性樹脂なども造形が可能になり、治具、樹脂型、小ロットの最終製品の製造などにも使用の幅が広がり、複合素材による造形で、従来にない機能性部品の開発にも利用され始めている。
 

インクジェット方式3Dプリンターのメリットとデメリット

インクジェット方3Dプリンターのメリットとしては、フルカラーによる造形が可能であることが挙げられる。また、マテリアルジェッティングの場合、非常に狭い積層ピッチにより滑らかな表面で造形が可能であるため、非常に表現力の高い色や形状を持った製品を製作することが可能だ。
これにより、よりリアルなフィギュアや、顧客の要望に合わせた色や形状のカスタムパーツを1個から製作することが容易となる。複数の性質の樹脂素材を混合して造形することで、今までにない性質の機能性部品を造形することや、部位によって異なる性質を持つ素材を使った部品を一体成型で造形する事も可能となる。
近年では金属素材の造形、実際の製品に使われるABS樹脂やポリプロピレン、ゴムなど熱可塑性樹脂に近い強度や熱耐久性などを持つ素材での造形も可能となり、模型用や形状確認用の試作に留まらず、最終製品への利用も増えている。造形速度も他の造形方法と比較して速く、小ロットでの製品生産にも対応可能だ。

デメリットとしては、光硬化性樹脂を使用した場合、太陽光に長期間照らされるような紫外線の影響を受ける場所では素材の劣化が起こる。光硬化性樹脂の種類によっては、取扱いに注意が必要なものもあり、特殊な空調設備や、造形後の洗浄を行う処理設備が必要となる場合もある。
また、バインダージェッティングにおいては、石膏粉末を使用する場合、造形された製品は脆く、使用できる対象が限られる。滑らかな曲面は造形できるが、表面は粉末を使用するのでザラついた面となる。金属素材の粉末による造形においても、造形直後は結合剤で固めただけなので脆く、炉に入れて加熱焼結するなどの後処理が必要となる。

しかし、光硬化性樹脂に関しては、光造形方式と同様に年々研究開発が進み、様々な機能が追加され、取扱いも容易になってきている。熱処理が必要ではあるものの、微細で複雑な金属材料での造形が高速で可能となり、最終的な熱処理まで一貫で出来る装置の開発も進んでいるため、インクジェット方式3Dプリンターは今後製造現場において注目すべき造形方式といえる。
 
微細で複雑な金属材料での造形が高速で可能
 

まとめ

インクジェット方式3Dプリンターは、従来は用途が限られていたが、近年は選択できる素材が増えて注目度が増している。取り扱う素材によっては追加設備が必要とはなるが、装置そのものの構造は比較的単純で、価格も他の方式と比べて安価で造形速度も速い。

現状では試作レベルの形状確認に使用されることが多いが、今後は最終製品にも使用される可能性が高いといえる。金属素材まで対応可能なインクジェット方式3Dプリンターを扱える場所はまだ少ないが、まずはフルカラーによる造形や高い表現力を体験してみることで、インクジェット方式3Dプリンターの可能性を知ることができるだろう。

 

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