3Dプリンター利用ガイド: 本格検討編

3D CAD設計

製品開発の現場に浸透する3D CAD。2D CADから切り替えを行う上でのポイント

従来のような2D図面、2D CADに代わり、3D CADを利用する企業が増えている。射出成形品などを扱う現場など、2D図面と併せて3D CADで製作した3Dデータをやり取りするケースも増えてきた。3D CADを導入し、それを使いこなすためには何が必要なのかを解説する。

3D CADを使いこなすために必要なのはことはなにか

2-1 3D CAD使いこなし術

図面を描いたり、3Dモデルを製作する以外にもさまざまな機能を持つ3D CADだが、社内で使いこなすためには、様々な課題が存在する。ここでは3D CADの導入から運用における課題と解決策などをまとめた。

 

2-2-1 3D CAD導入にあたっての課題

3D CAD導入時に課題となるのは使用者のトレーニングや、社内ナレッジの共有などだ。課題の項目ごとにどのような問題があるのかという点とその解決方法を紹介する。
 
・トレーニング

3D CADには様々な機能があり、従来のような2DのCADソフトとは異なる操作方法も少なくない。3D CADの機能を使いこなすためには、操作方法の習得は避けて通ることのできない課題となる。

3D CADの操作方法を習得する方法としてまず最初に考えられるのが、講師に教わる方法だ。例えばCAD利用技術者試験 などの資格取得を目指すサポートスクールなどに通う方法がある。アビバソフトキャンパス といったパソコンスクールの中に、CAD用のコースが設けられているところもある。CAD利用技術者試験には3D CADを対象とした試験も存在している。CAD利用技術者試験はCADを使いこなすために必要な技能を問うものであるため、資格対策スクールを利用することで、3D CADの機能を効率よく学ぶことができるだろう。

また企業や一般向けに開講されている民間のセミナーも存在する。対象とするソフトによって講座が異なるが、セミナーを開催している団体としてはスリプリや大塚商会などがある。企業向けのセミナーでは、設計変更や他のソフト制作されたデータとの連携など、実際の業務で多く使う機能などを効率よく学ぶことができる。また受講人数によっては企業研修として講師に来てもらうことも可能だ。

さらに3D CADの導入時に使用方法のレクチャーを行ってくれる代理店もある。例えばCATIA V5を販売しているダッソー・システム社では、購入者向けの講習も用意している。導入の相談をスタートした時点から講習についても同時に相談していくことができ、よりスムーズに運用開始することができるだろう。
 
・社内ナレッジの共有と蓄積

3D CADの導入と最初のトレーニングが終了した後は、社内ナレッジの共有と蓄積が課題となる。例えば新入社員が入ってきたり、人員の部署移動などがあった場合には、新しいメンバーへの手ほどきが必要になる。社外のセミナーに参加させる方法もあるが、例えば先輩が後輩に指導するように、社内で教育を行うことも少なくないだろう。そのような場合には、頻繁に使用する機能などを効率よくまとめた独自マニュアルを作成する方法もある。独自マニュアルの作成は、すでに使用方法を知っているメンバー間での知識の再確認にもなる他、新しいメンバーへの配慮にもなる。

会社の規模によっては、社内にCADサポーターを育成しているところも多い。大きな企業では複数の社内サポーターを用意し、1つの部署として組織しているケースも数多くある。サポート部署内では定期的にナレッジ共有ミーティングを行ったり、社外で行われる上級者向け講習にメンバーを派遣するなどして、部署としてのスキルを向上させていくことが必要になる。
 
・2D CADから3D CADへの切り替える場合の注意点

これまで2D CADを使用してきた場合でも3D CADへの切り替えには様々なタスクが発生する。
システム面では部品表と3Dデータとの連携や、取引先で使われている3D CADとの互換性のチェックなとが存在する。またこれまでに使用してきた2D CADで製作した図面を3D CADに取り込んで修正できるかなどのチェックも必要だ。2D CADで製作してきた古い図面も、設計変更などのタイミングで3D CADでのデータに描き直すなどの対応も必要になる。
企業規模と3D CADの導入台数によっては、導入に先立って社内サポーターを育成しておく必要もある。また導入に伴うシステムメンテナンスで、端末を使用できない時間が発生したり、実務にあたる人員が3D CADを習得し、操作に慣れるまでの時間が必要だったりという人材面での計画も必要だ。生産計画などとも調整を行い、負担の少ないタイミングでの切り替えを行うなどの工夫をするといいだろう。

さらに、現状のシステムや現在使われているパソコン、端末で3D CADを問題なく使用できるかの確認も必要になる。個人やスタートアップ企業向けのエントリータイプ3D CADであればあまり心配はないが、ダッソー・システム社のCATIA V5などは、必要とされるメモリ量もかなり多くなる。3Dモデルの作成中や演算中にフリーズするなどの問題を起こす可能性もあるため、導入前の確認が必要だ。
 
・3Dプリンター活用を見越した3D CAD導入の注意点

3D CADの導入にあたって、3Dプリンターの活用を視野に入れているケースもあるだろう。この場合は3Dプリンターと3D CADの連携を確認しておく必要があるが、主要な3D CADであれば既に3Dプリンター側で対応可能になっているケースがほとんどだ。オートデスク社のFusion 360やInventor、ダッソー・システム社のCATIA V5、SolidWorks社のSolidWorksあたりならば問題なく使うことができる。

3D CADソフト

 

2-2-2 実際の運用にあたっての課題

実際に3D CADの運用が始まり、軌道に乗った後に考えるべきなのは、今後のことである。長く使用していけば、ナレッジやノウハウも蓄積されるが、一方で古い部品のデータや試作のデータなども蓄積していく。部品名称やファイル名の付け方、データの保存場所などのルール作りは、できるだけ早く行っておくべきだろう。またアッセンブリデータの中の部品ツリーなどは常に整理しておくことも必要だ。不要になったデータを消すなどの小さなメンテナンスも、利用者の手でこまめに行っておく必要がある。これらの行動を怠ると、データの共有がスムーズに行えなくなったり、データそのものが不必要に大きくなる可能性がある。

また、3D CADを導入しても社内で利用されなければ意味はない。普及させるためには、先述のようなルールは使いやすく、シンプルにしなければならない。社内に3D CADのサポーターやトレーナーを置く場合には、聞きやすく対応しやすい雰囲気を作ることも必須だ。

今後はさらに3D CADによる3Dデータでの情報共有が一般化していくだろう。現在は2D CADのみで問題なく取引できている業種でも、いつかは3D化の波が来ると考えても差し障りはない。どこかで切り替えは必要だと割り切り、状況によっては「新しい部品は全て3D化する」など、強制的な運用ルールも必要になる。

 

2-2-3 3D CADを使いこなすために

3D CADを使いこなす上で大切なのは、やはり3D CADを難しく特別なものにしないことだ。3D CADが使えなくなる理由として、使い方が難しい、思ったように形状が作れないなどが挙がることがある。セミナーや企業内研修を活用する他、社内ナレッジの共有を行い、難しさを感じる機会を減らす工夫が必要になる。

また、先述のようにパソコンや端末のスペックの確認や、部品表などへの連携が簡単であることも確認しておかなければならない。
例えば部品表と2D図面の紐づけが簡単に行えないなど、現状でも課題を抱えている場合には、3D CADの導入は、従来のシステムを構築し直す絶好の機会になる。そのため、まずは現状の運用方法の見直しから始め、現在ある課題を整理し、改善するなど、図面製作全般の業務フローを見直しておく必要がある。

3D CADの導入イメージ
 

まとめ

3D CADをスムーズに導入し、使いこなすためには、まずは現状の2D図面の運用方法の見直しから始めるのがポイントになる。また導入した3D CADの使用方法をどうやって社内で広めていくかなどの、ナレッジの共有についても考える必要がある。

アッセンブリシミュレーションやFEM解析 など 、既に様々な検討が3Dデータ上で行われるようになった。さらに3Dプリンターや3Dデータから直接加工を行うNCも登場するなど、3Dデータの重要度は日に日に増している。2D図面が消滅することはなくとも、3Dデータが必須という現場も今後は増えていくだろう。3D CADの導入はいつかは必要になると考え、恒久的なシステムを構築するつもりで切り替えを行うことが大切になる。