3Dプリンター利用ガイド: 本格検討編

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製品開発の現場に浸透する3D CAD。各社の特長と製品の紹介

ものづくりの現場において、作りたいものの形状を正確に共有するプロセスは非常に重要なポイントの1つだ。その方法の1つとして、紙などに描かれた2次元の図面が長い間使用されてきた。しかし近年では3D CADで製作した3Dデータ(3次元データ)が使用されるシーンが増えてきている。例えばNC旋盤でも、3D CADで作成したデータを元に加工を行える機種が数多く出ている。また近年注目を集めている3Dプリンターは、3D CADで作成したデータが無くては動かすことはできない。自動車産業や家電業界などをはじめとした多くの業界で、3D CADは欠かすことができないものとして扱われている。

様々な種類が存在する3D CAD。各社の特長やハイエンドモデル、エントリーモデルを紹介

代表的な3D CAD

3D CADの導入を検討する場合、どのような部分に注目していけばいいのだろうか。まず気になるのは、3D CADにも様々な種類があることだろう。ここでは各社の3D CADの特長を解説したい。
 
いくつもの種類がある3D CADのうち、まずは代表的なものから紹介する。現在、最もポピュラーといえるのが、次の2つだ。

1つ目はオートデスク社のInventor。製造業で広く使われている3D CADで、製品設計だけでなく工場レイアウトにも使えることが特徴だ。もう1つがダッソー・システム社のCATIA V5。日本ではトヨタ系などの自動車業界や家電メーカーなどで広く使われている。主要産業ではInventorやCATIA V5が特に多くの比率を占めている。

Inventor、CATIA V5以外の3D CADで自動車産業などの主要産業でも使われる3D CADも紹介しておきたい。知名度が高いのは、シーメンスの関連会社であるシーメンスPLMソフトウェア社が提供する3D CADだ。シーメンスPLMソフトウェア社の3D CADを代表するのはNXおよびSolid Edgeだ。特にEdge はWindowsに完全準拠しているCADとして、高いユーザビリティが評価されている。

また、ダッソー・システム社の子会社であるSolidWorks社が提供するSolidWorksも有名な3D CADの1つだ。CATIA V5に比べて安価ではあるもののCATIA V5と比較すると複雑なサーフェース構成には向かないなどの制限も存在する。PTC社が提供するCreo Parametricは3Dデータと2D図面との連携機能が強力であることが強みだ。多くの3D CADでは3Dモデルを元に2D図面を生成するが、一度生成された2D図面は3Dモデルとの関連が切られ、2D図面を変更しても3Dデータが変更されることはない。しかしCreo Parametricでは2D図面を修正すると3Dデータも更新される。

ここまで紹介してきた3D CADは主要産業などでも使われるものだが、スタートアップ企業やスモールビジネス、個人使用向けに無料で配布されている3D CADもある。オートデスク社のFusion 360やSolidWorks社のSolidWorksだ。この辺りのラインナップは趣味でのラジコン製作や、3Dプリンターを使う際などにも役立つだろう。
 

各社製品の特長

 
続いて、各社製品で特に優れている点を紹介する。

まずは最もポピュラーなInventorとCATIA V5についてだが、Inventorは3Dデータの作成だけでなくデータ上でのアッセンブリやレンダリング、解析まで可能だ。さらに3DデータからBOM(部品表)まで作成できるという利点もある。また2D CADとして多く使われていたAutoCADのデータをそのまま使用できることも、既存の2D図面データと3D CADデータをリンクさせていく上では便利な点になるだろう。

CATIA V5もInventor同様、データ上でのアッセンブリなどが可能だ。またFEM解析やNC加工のシミュレーションも可能であることも利点である。3D CADと3Dデータの普及や、よりコストメリットの高い開発が望まれる背景もあり、既存のような実機を用いての試作・試験がシミュレーションで代用される流れもある。そのためCATIA V5のようにFEM解析などのシミュレーションが可能な3D CADは、今後の製品開発には欠かせない存在となっていくだろう。

シーメンスPLMソフトウェア社のNXやSolid Edgも、やはりInventorやCATIA V5と同様、3Dデータ上でのアッセンブリやシミュレーションが可能だ。3Dスキャナーとの連携したリバースエンジニアリングなどにも使用でき、幅の広い使い道を想定することが可能だ。

続いて使用目的や事業規模などに応じて各社製品を紹介する。先に紹介したダッソー・システム社のCATIA V5やオートデスク社のInventorは、高機能ではあるが年間の使用料が数十万円かかるケースも多いハイエンドタイプとなる。そのため大手企業などで使用されているケースも多く、取引先がハイエンドタイプの3D CADを使用している場合には、同じCADを導入することで、よりスムーズなやり取りを期待することが可能だろう。

一方でスタートアップ企業や小規模事業、個人での使用に向いているのが、オートデスク社のFusion 360やSolidWorks社のSolidWorksなどのエントリータイプだ。導入する会社の規模や使用期間、使用目的によっては無料でも利用が可能など、よりお得な料金プランを用意しているところもあるため、導入前に詳しく調べてみるといいだろう。またこれらのエントリータイプは基本的にクラウドベースでの利用となる。そのためハイエンドタイプと異なり、マシンスペックの低いパソコンでも使いやすいという利点がある。

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CADデータの作成方法の簡単な概略

 
続いて3D CADデータの作成方法について簡単に解説しよう。

3Dデータの作り方には、大きく分けて2つの方法がある。2D図を作成し、そこからソリッドで押し出す方法と、スカルプモードで形状を削ったり盛ったりしていく方法だ。

2D図から作成していく場合、一般的にはまず、大まかな外形を平面で描く。そこからソリッドで押し出して厚みをもたせ、3Dデータ化する。最後に必要な部分に穴を開けたり、面取りや勾配などの調整を加えながら形状を整えるという形になる。このような作業を繰り返しながら部品ごとに作っていき、最終的に3Dデータ上でアッセンブリを行い、部品同士の干渉などを確認することになるだろう。

2D図面に比べて製品の形状がイメージしやすく、様々な機能がある3D CADだが使用する上で気をつけなければならない点もある。新入社員などの若い世代に多く起こりがちな現象だが、2D図面にあまり触れないままに3Dデータだけで作っていると、2次元図面の重要性を失念してしまうケースが存在する。2D図面での基準面の考え方などが希薄となり、製品検査時の測定などが困難になる場合がある。3Dデータ上の形状だけでなく、図面そのものの考え方や、その後の製品の製作の流れについても把握しておくことは必須だ。

3D CADデータによる製造イメージ
 

まとめ

主要産業を相手とし、規模の大きな事業の中で使用していくのであれは、やはりオートデスク社のInventorやダッソー・システム社のCATIA V5が向くだろう。
一方、個人利用やスタートアップ時のエントリータイプとしておすすめなのはオートデスク社のFusion 360だ。非利益利用であれば無料でも使うことができるのが何よりのポイントだ。

3D CADは従来のような2D図面と異なり、図面を読む知識がなくとも製品の形状を理解することが可能だ。しかし部品を組み立て、1つの形にしていく上では、基準面や交差、はめあいといった基礎的な知識を欠かすことはできない。3Dデータだけで考えるのではなく、現実の知識を大切にすることを忘れてはならない。